マネジメントオブザベーション(MO)

7月4日付け日経新聞1面、エンゲージメント改善結果を賞与に反映

7月4日付け日経新聞1面に、パナソニックHDの子会社のパナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)が従業員約6千人のエンゲージメント(熱意、やりがい、貢献意欲)評価結果に基づき、エンゲージメントが大きく改善すると、年間100万円超えの程度幅をもって、執行役員の賞与が増える制度を導入すると載っていました。

皆様ご存じのとおり、当社の現場支援は、必ず、従業員エンゲージメント評価から行わせて頂き、これをもとに、マネジメントオブザベーション(MO)等を展開し、常に、エンゲージメント評価結果と見合いながら、経営改善、現場改善、人財育成のPDCAをまわしていきます。

その理由は、最も安くて効果のある改善活動は「従業員エンゲージメントを上げること」であるからです。従業員エンゲージメントが低い場合、どのような改善活動も成果につながり難いのです(詳しくは、グーグルのプロジェクトアリストテレスを検索してみてください)

これまでも、米国系の企業であれば(仮に日本法人であっても)、1回/年以上のエンゲージメント調査を行い、管理職の評価につなげる取り組みは一般的に行われていましたが、純粋な日本企業の場合は、(当社の支援先以外では)珍しいと思いました。

米国の原子力施設にあっても、当然のごとくエンゲージメント評価が重視されていますが(その結果で、管理職が評価されます)、これは、効率運営に加えて、原子力施設は核物質防護(PP)の重要性が高いからという理由もあります。

原子力安全に関するリスクは、「内部リスク」と「外部リスク」に分類されます。内部リスクは機器の故障確率に基づいて評価され、外部リスク(津波、地震、戦争、テロ・・)は発生確率に基づいて評価されます。

リスク評価にあたって難しいのは、外部リスクの評価であり、例えば、戦争等のリスクは想定が難しく、これらは「残余のリスク」と呼ばれます。その上で大切なことは、「想定外を想定する」ことであり、即ち、「残余のリスク」に対して、目をつぶることなく、「今できることを少しでも愚直に行っていく」ことです。

原子力施設にあっても、経済的合理性は重要ですから、「すべてのリスクをゼロにはできない」ことを共有し、それでも、「何か出来ることがあるはずだ」と悩み、考え、全員が今できることをひとつでも行い、上を目指していくことによってのみ、リスクマネジメントが成立し、結果として、「安定操業」を行うことができるのです(米国でも同様です)。

そのような中、原子力事業者の社員のみならず関係企業の作業員も含めて、誤操作、いたずら等の脅威は無視できないものであることから、常に関係者全員のエンゲージメントを高めようとするマネジメントは、至極当たり前であり、原子力施設にとっては、むしろ、重要な評価指標(PI)になるのです。

おかげさまで、当社は、北は青森県から南は沖縄県までお付き合いさせて頂いており(原子力関係以外の企業様も多いです)、従業員規模も数名から2000名以上まで様々(主に製造業、建設業、飲食・サービス業)です。このように、クライアント先に恵まれた状況から、エンゲージメント評価結果には、大きな特徴があることが分かります。

それは、小規模企業ほど、現場チックな企業ほど、エンゲージメント評価結果が高くなるという傾向です。小規模企業は、大きな企業に比べて、給与も福利厚生も職場環境も劣る場合が多いのですが、小規模企業のエンゲージメントは「一人ひとりの責任」「一人ひとりの能力向上」との相関が高いという特徴があります。

一方、年代別でみると、新入社員(18歳)~若手と呼ばれる方々は、給与よりも職場環境(ホワイトさ、コミュニケーション)との相関が高く、これは、女性社員の傾向と重なります。(若い世代が考える「ホワイトさ」と、経営層が考える「ホワイトさ」は少々異なりますのでご注意ください。。)

また、外国人技能実習生が多い現場などは、「工場内に自動販売機がある」「近くにコンビニがある」という理由で、エンゲージメントが高くなるケースもあります。

このため、会社全体のエンゲージメントを向上させていくためには、企業規模に応じたマネジメント、年代構成に応じたマネジメント、性別構成に応じたマネジメント、そして、経営方針(社長の想い)を組み合わせていくことが必要であり、だからこそ、各社毎の個別の取り組みが重要となります。単なる人(他社)真似は成果につながり難いのです。

当社も米国の原子力施設のマネジメントを参考にしているものの、米国と全く同じには行いませんし、国内クライアント先企業においても、各社毎に様々な基軸で展開して頂いています。

1点補足すると、我が国には、安全衛生法等の安全衛生法令があり、職場の安全衛生は、これらに基づき、全国で標準化されています。もし、我が国の安全衛生法令が適用されない米国の安全管理手法をそのまま適用したとすれば、それは、現場に大きな混乱を来しますし、法令遵守のみならず、大きな弊害が出てきます。

ですので、特に製造業、建設業、陸運業にあっては、安全衛生法令を遵守し、我が国の標準的手法(中災防、陸災防、建災防等)の標準手法に基づいて安全衛生活動を愚直に展開していくことが重要なのです。その上で、米国の優れたところを、我が国用に変形(変化)させて取り入れていく(あくまで芯棒は、リスクマネジメントやTBM-KYを含めた「安全衛生法令」)という考え方が大切になります。

今後も、『エンゲージメント評価』と『マネジメントオブザベーション(MO)』を組み合わせて、明るく、楽しく、従業員一体となったマネジメントチェンジを行っていきましょう。

朝ごはん、お昼ご飯をしっかり食べて、本日もご安全に。

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