マネジメントオブザベーション(MO)

心理的安全性

我が国では、トヨタカイゼンが有名ですが、広義には、トヨタカイゼンもIE(Industrial Engineering)の一環であると捉えると、今まで見えなかったものが見えてきます。

一方で、火力・原子力施設のようにQMSが充実している職場は、ISOに基づく各社のQMSの理念そのものがカイゼン活動の理念と合致しているはずですので、カイゼン活動をQMSとは別のマネジメントとして導入するとなると、深い注意が必要です。

実は、私たちの世代で思い出深い?、TQCやTQMもカイゼン活動そのものでしたが、理論の進化と共に忘れ去られてしまった職場も多いかと思います。少し乱暴な言い方をすれば、もし、今も継続して、TQC活動を愚直に継続し、深化させていたなら、(建設業態である)発電所も今とは全く違った文化になっていたと思います。

発電所を、電気を作る工場と捉え、既存のカイゼンツールを活用することは、決して間違いではありませんが、あくまで活用するという視点が大切です。なぜならば、発電時(ライン生産時)よりむしろ、定期検査時や建設・改造工事時(昨日と同じ現場はない)が重要だからです。そして、職場の根底には、日給月給で働かれている方々を含めた「自己実現」があり、「心理的安全性」がなければなりません。

グーグルが2012年から約4年の年月をかけて実施した生産性に関する研究結果(プロジェクト・アリストテレス)からは、高い生産性を上げたチームには「心理的安全性」が備わっているという共通性が認められたとしています。

グーグルがカイゼン活動を実施しているのかどうかは分かりませんが、少なくとも、カイゼン活動はツールであって、その目的が「生産性を高める」ことであるとすれば、活動の根底には「心理的安全性を高める」ことが必要であるということです。繰り返して付け加えるならば、我々のパートナーである日給月給で働かれている方々を含めてということです。

心理的安全性とは、他者からの反応におびえたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分自身をさらせる環境があることであって、チーム内で、自分の思ったことを発言したり、自分をさらけ出しても人間関係を損なわずに受け入れられる環境作りこそが重要であって、チームメンバーのメンタルへの配慮が生産性の高い組織作りには欠かせないということです。

さて、20数年以上前に行っていたTQC活動を思い起こすと、私は、「楽しかった」思い出のみが蘇ってきます。成果は大したことがなかったかもしれませんが、チーム名が変な名前だったりするのも、実は、大きな意味があったことに気付かされます。

現在は、TQCの流れはTPMに引き継がれているといえるのだと思いますが、コストダウン(PQCDSMEのC)は生産性を高める重要な指標(目標)の一つではあるののの、最終目標となる「ありたい姿」は、あくまで「生産性の高い職場」ですので、カイゼンのツールに飲み込まれないように気を付けたいと思っています。

結局のところ、IE(カイゼン活動)を進めていくにあたっては、リスクマネジメントの概念である「重要度」を忘れてはいけないということであって、重要戦略課題の整理が重要であるということです。この観点からも、マネジメントオブザベーション(MO)は、建設現場のカイゼンツールとしても、理にかなっています。

1年365日、1日24時間という制限がある中では、「特に重要なことには注力し(完璧を目指し)、そうでないことは相応に行う」ことにしか道はありません。さらには、働き方改革という、機会(O)であって脅威(T)でもある大きなうねりが来ています。

私共も、資源の集中化、全体戦略を踏まえた重要戦略、関係者一人一人のベクトル(認識の共通化)を重視し、その根底には「心理的安全性」が必須であることを肝に銘じて、現場の支援を行って参ります。

本日もご安全に。

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