品質管理・品質保証・原子力安全管理の違いとマネジメントオブザベーション(MO)を時評に載せました。

品質管理・品質保証と原子力安全管理の違いについて質問がありましたので、ここで、概要を簡単に整理しておきます。また、原子力安全管理は、作業安全管理にも通じるところがありますので、最後に、この点についても触れておきます。

まず、品質管理は、要求品質を満足するように管理(標準化)する仕組みで、合否(成否を)判断し、(PDCAも含めて)合格した製品(商品、請負工事・・)をお客様に販売していくために(PDCAも含めて)必要な仕組みです。

品質保証は、不適合管理を含め、品質管理という仕組みが機能するように、(不適合管理、PDCAも含めて)製品を保証する仕組みです。

代表的な標準化としては、一般にISO9001が知られています。でも、ISO9001を廻しているとしても、不適合(歩留まり)が0になる訳ではありません。あくまで、0になるようにPDCAを廻し、らせん状に品質を高め、リスクを最小化していくために使用されます(例えば、新製品の切替時や何かのトラブルで、どうしても不適合が発生してしまうことが前提の考え方です)。

この観点から不適合に学ぶ(失敗に学ぶ)という考えも積極的に許容されます。

一方、原子力の安全管理では、「絶対に」原子力災害を起こさないように管理(マネジメント)することが何より重要です。繰り返しとなりますが、何より原子力災害を絶対に起こさないというマネジメントが主軸となります。

リソースは有限ですので、原子力安全に関する事項については徹底的に議論し、共有し、掘り込み、未然防止に努め、単に品質上の不適合(極端に言えば、例えば書類の誤字、海生物による発電支障事故など)はある程度仕方ないという考え方です。もちろん、経済性から言えば、原子力発電所の設備稼働率が高い方が良いですし、プラントが止まると国民の皆さまが不安に感じますので、発電所で働く職員の皆様は、日々、プラントの経済性にも配慮し、頑張っています。でも、事実から見ると、安全を極限追及すると品質(設備利用率)も高まります(「安全第一」という考え方も同じですね)

ここで、もし、原子力安全管理について、「不適合に学ぶ」ことが”一般産業と同等に”扱われたとしたらどうでしょう?(決して不適合に学ぶことは悪くなく、とても大切なことです。ですので、ここから先、慎重に書きたいと思いますが、もし、表現が適切でない場合はお詫びいたします。繰り返しになりますが、不適合に学ぶことは大切です)。

原子力の現場では、OE情報等、世界中の原子力施設の事故、不適合を共有し、安全性を高める作業を世界の国々と連携し、活用していますが、それでも、過去の例からは、原子力災害は(現実上)「想定外」に発生しています。

言い換えると、「想定外」の重大事故を防止することが重要で、注力して気にしなければならないのです。例えば、福一事故のような災害の結果、(福一に学び)世界中の原子力施設の安全性が高まったとしても、そのことを以って、原子力安全性の向上活動は、決して終わりではないはずいです。

リスク0はありえないことから、(協力企業も含めて)原子力に携わる人たちは、日々、(福一からの教訓は当然として)さらなる安全性を高める活動を継続し、原子力災害0を実現ていくことが重要です。

即ち、”何か事が起きる前” ”原子力災害が起きる前”に、原子力災害のリスクを下げる「マネジメント」の改善を行い、”直接的に”「想定外」に対処していくことが重要である(有限なリソースを投入し、力を入れて取り組む)という考え方です。

そのためのツールがマネジメントオブザベーション(MO)です。言い換えると、結果ではなく(結果が良くても、悪くても、事故が起きていなくても、現状に満足せず、たまたま良かっただけ、単に運が良かっただけくらいに考えて)プロセスの改善(マネジメントのPDCA)に注力するマネジメント手法です。

今日は、MOの解説は行いませんが、IAEAがINSAG4やINSAG13で定義しているように、安全文化の改善(マネジメントの改善)とは即ち、「態度」と「行動」を改善していく(高める)ことによってのみ高まっていくという考えは、MOというマネジメント手法を象徴的に表しています。すなわち、「原子力安全管理」という(特に、リスクが大きな設備に対する)特別な考え方に由来しています。

原子力は災害のリスクがとても大きいので、一般的な品質管理、品質保証の仕組みだけでは不十分なのです。当然のことながら、身だしなみ、大前提として必要であることは論を俟ちません(誤解なきよう)。

具体的には、例えば、半期のMRM(マネジメントレビュー会議)において、仮に、当該期間に不適合が発生していたとしても、していなかったとしても、それは、単にマネジメントの結果として現れたものであって、重要なことは、その結果に至るまで、半期間で何回、マネジメントにPDCAを廻したのかが重要になるという考え方です。(MOの基本です)

翻って、作業安全管理(人身災害防止)も、原子力安全管理と似ていて、「絶対に災害は起こさない」「絶対に災害が起きないようにマネジメントする」という覚悟と取り組みが重要になります。死亡災害、重大災害を起こして良い理由など、(誰が何と言い訳しても、想定外としても、残留リスクとしても、そんなことが)ある訳がありません。

協力企業を含めて、原子力職場で働く人たちは、原子力安全管理の考え方(想定外を想定する、想定外に対処する)を肌で感じている(言葉で説明することが難しいと感じている方もいらっしゃるとしても)ので、(当然、改善の余地はありますが)、作業安全管理も、安全衛生法(例えば、OSHMS)考え方もしっくりきますし、「特に重大災害だけは絶対に起こさない」という作業安全管理(リスクアセスやKY)も、(原子力屋さんとして)恥ずかしくないレベルで取り組んでいます。(常に改善の余地はあります)

以上のように、品質管理・品質保証の仕組みは有効としても、「想定外」事象に対して、どれほど備えられるのか、どれほど対処できるのか、というマネジメントが重要になるのが原子力安全管理(作業安全管理)です。

これをリスクマネジメントと捉えても決して遠くはありませんが、私は、「世間一般で言われているリスクマネジメントとは似て非なるものです」とお話しています。

どこが似ていて、どこが遠いのかについては、またの機会にお話いたします。

 

厳しい夏も終わり、年の瀬も見えてきた今日この頃ですが、皆様、どうぞ、ご安全に!