マネジメントオブザベーション(MO)

アマゾンの米オーロラへの出資について(雑感)

2019年2月9日の日経新聞(13面)に「アマゾン、自動運転参入」という記事が載りました。同じ紙面の12面には「ヤマト、人手確保進み反撃」という記事が載っています。

この2つの記事には関連性がないようにも見えますが、ソフトバンクとトヨタによる新しいモビリティーサービスの連携や、トヨタによる米ウーバー(UBER)への出資、さらには、米ウーバーの筆頭株主がソフトバンクであることなどから、今後のモビリティーサービスを予想してみたいと思います。

AIやIoTの進歩により、全自動運転車の市場導入もすぐそこまで来ています。米ウーバーの周りでは、グーグル系のウェイモがフィアット・クライスラー・ジャガー・日産・ルノーなどと連携を深め、米インテルがBMW・フォードなどと連携を深めています。

このような中、アマゾンが米オーロラに出資し、自動運転技術を抱え込むという記事に触れるにつけ、物流の仕組みが大きく変わることが予想されます。

物流におけるアマゾンの強みは、アマゾンというネットショップ(EC)と自動化された自前の出荷システム(倉庫)、さらには、ヤマト運輸に代表される配送業者との連携によって、安く、早く、宅配できることです。

当社も、アマゾン(様)には、物流委託先として大変お世話になっています。

EC業界でこれまで大きな課題となっていたのは、配送業者の人手不足であり、アマゾン等の配送を請負うヤマト運輸は、配送料の値上げや総量抑制を行ってきました。今回の記事は、シェア低下の危機感から、これまでの方向性を転換し、反撃に転じるというものです。

キーワードは、「シェア低下」であり、これは単に他の配送専門業者にシェアを奪われるという単純な問題ではありません。

もちろん、今後もネット販売や宅配が伸びるということは間違いありませんが、そのことと、配送専門業者のシェアは、必ずしも比例しないのです。

ここで、注目されるのは、米ウーバーです。ウーバーが展開している配車技術(アプリ)は、 わが国でも、すでにウーバー・イーツ(UBER eats)として、主に都市部で利用されています。

UBER eatsは、UBER eatsの会員になっている飲食店から、宅配してもらえるというシステムです。ここでは、詳細な説明を省きますので、ご興味のある方は、検索してみて下さい。

ここで着目したいのは、UBER eatsの立場で配送を担う配達員です。配達員の多くは高校生や大学生をはじめとしたアルバイトですが、(補償や保険などの課題や賛否はあるとしても)全員が個人事業主(経営者)として扱われ、しかも、好きな時間にスマホアプリを起動させることによって、その時間から配達員として働くことができようになっています。(源泉徴収がありませんので、各自で納税の義務を果たす必要があります)

例えば、京都に旅行に行って、時間が空いたから配達しようと思えば、その瞬間から配達員に変身することができるのです(ただし、例のバッグは必要です)。

シェアサイクル(自転車)に乗って、スマホ上のマップの指示(ピン)に向かって進めば、知らない街でもお客様に商品をお届けすることができ、1週間後には代金(対価)が支払われる仕組みです。

お客様からは、配達の状況(位置)などをマップ上で確認することもできます。

スマホアプリ(携帯電話又はPC)が必須であるからこそ、ソフトバンクとの連携も意味をもって見えてきます。

一方で、働き方改革の流れの中、企業では副業を認めることが一般化されてきていますが、副業をしたくても、時間の拘束が難しい人たちも沢山います。

ウーバーの配車アプリの特徴は、スマホアプリをONにするだけで、誰に断ることもなく、すきな時間に好きなだけ働くことができる点ですが、そこには、双方向評価、クエストやブーストといわれるゲーム感覚のインセンティブ(割増賃金)などを効率よく活用し、単なる副業から責任感をもった誠実なプロの配達員に、一瞬で仕上げることができる仕組みが備わっています。

付け加えるならば、店舗、お客様、配達員の双方向評価によって、それぞれが高いレベルで対応を行うという仕組みは、(褒章にはお金が伴うと考えがちの私たちにとって)とても参考になりますが、さらに言えば、「双方向」には、配達員が店舗やお客様を評価する仕組みも含まれ、とりわけ、配達員がお届け先のお客様を評価するという仕組みは画期的です。

現在は、首都圏の飲食物を近隣に配達するという規模に留まっていますが、これを物流システムとして置き換えて考えてみるとどうでしょうか?

配達は、単に配送専門業者の領域ではなくなってきていることは一目瞭然です。

例えば、アマゾンで注文された商品は、配送専門業者や自動運転サービスによって購入者の地域の配送センター(コンビニでも、一般店舗でも、十キロ程度の圏内であれば可)まで運ばれ、あとは、(プロの)副業配達員が責任感をもって誠実に宅配してくれるという姿も想像されます。

今後はもちろん、シェアライドも解禁されるでしょうから、自動運転に加え、相乗りも普通の世の中になると思われます。

アマゾンとオーロラの連携も、ソフトバンク、トヨタ、ウーバーの連携も、物流の変革を意味します。

今回の記事は、やはり衝撃的であり、年号が変わる今年は、物流変革元年となるとの想いを新たにしました。

 

ご安全に

 

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